没後100年 五姓田義松-最後の天才-
こちらを見に馬車道の神奈川県立歴史博物館に行ってきました。 ![]() 重要文化財にも指定されている「旧横浜正金銀行本店本館」 八角形のドームを持つネオバロック様式。 今見ても威風堂々たる建物なので、 完成した当時(1904年・明治37年)の人々の驚きたるや如何許りでしょうか・・・。 さて早速建物に入ってみます。 中も非常に歴史を感じさせる造り。 勿論、作品保護のため照明を落としているせいもありますが 薄暗い雰囲気が今回の特別展を普段の美術展とは少し異なる印象に仕立てています。 ・・・・あなたは、天才 五姓田義松を知っていますか?・・・・ 実は知っていました。 初めての出会いは、鎌倉の神奈川県立近代美術館で観た この一枚。 ![]() ≪クリュニー美術館にて≫ まるで18世紀の廃墟の画家「ユベール・ロベール」が描いたような背景の前に 描かれている人物があまりに現代風で新しく、そのコントラストに惹かれたのでした。 ・・・・さて今回の展覧会では・・・・ 大小様々、総出品数800点を超える作品が展示されています。 まず最初はデッサンと水彩を中心に。 その辺にある小さな紙片に描き付けたようなものから 旅先でスケッチしたものまで。 普段は断然 油絵の方が好きなのですが、 義松のデッサンと水彩は緻密で、線が綺麗で 一目見ただけで、その実力を存分に感じることができます。 義松はかなり几帳面な性格だったのではないでしょうか。 写実的で細かい描写がお好きな方には、どの絵もグッと来るに違いありません。 義松は10歳の時(1865年)に横浜在住の英国人報道画家ワーグマンの元に入門します。 ワーグマンには、日本最初の洋画家とも言われる≪鮭≫の高橋由一も師事しています。 由一と義松は27歳も年の差があるので、義松は相当若いお弟子さんだったのでしょうね。 西洋の絵画を学んだ義松は、油絵でもその才能を如何なく発揮し、 明治政府や皇室の依頼で、要人の肖像画も多く描き、 宮廷画家として活躍しました。 デッサン・水彩・油彩。 どの手法を用いても、確かな画力が、見るものを唸らせます。 しかしこれだけの作品を残しているにもかかわらず、五姓田義松の名は 時の流れとともに忘れ去られてしまいました。 今回の大回顧展を契機に、どうか五姓田義松の絵の凄さが多くの方に認知されるように 願ってやみません。 最後を飾るのはサロンに初入選した ![]() ≪自画像≫ 東京藝術大学 蔵 自信に満ちあふれたいい表情をしています。 展覧会についての詳細はこちら 特別展 五姓田義松展のみどころ 神奈川県立歴史博物館のHPより 10月11日(日)9時から Eテレ日曜美術館にて「忘れられた天才 明治の洋画家 五姓田義松」 が放送されます。 是非ご覧下さい。ゲストは、明治学院大学教授の 山下裕二先生です。 最後にひとつだけ・・・ こちらのリーフレットは、ちょっとおどろおどろしい感じに思えるのが残念でした。 ![]() いろいろ盛り込み過ぎなのでしょうか。戦後の混乱期のような重苦しさを感じます。 もう少し繊細で緻密な画風が活かされていればよかったのではと思います。 何はともあれ、多くの方に天才、五姓田義松の絵の真髄に触れていただけますように・・・。 スポンサーサイト
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このところいいお天気が続いています。
すっきりと晴れた秋の空は本当に気持ちがいいですね。 朝は、木蔭で読書でもしようかなと思っていたのですが Eテレの日曜美術館 アートシーンで紹介されたシスレーの絵を見たら ≪サン=マメス六月の朝≫に会いたくなってしまいました。 ![]() ≪サン=マメス六月の朝≫ ブリヂストン美術館蔵 この絵は数あるブリヂストン美術館のコレクションの中でも 最も好きな一枚でした。 アルフレッド・シスレー展は、現在、練馬区立美術館にて開催中です。 アルフレッド・シスレー展 第1章では、生涯に900点ほど描いたという作品のうち、20点の風景が飾られています。 こう言うのもなんですが・・・実は日本人が大好きな印象派の絵が、 作風によっては、それほど心に響かないところがありまして・・・ でもその中で前述の≪サン=マメス六月の朝≫を始め、 シスレーの絵はかなり好きなのです。 何故か、ということが第1章のキャプションにより腑に落ちました。 モネの絵が、描くほどに輪郭線が曖昧になり、抽象化していったのに対し シスレーは変化する自然の描写の中に常に描く対象を確実に掴む一貫性を守り 印象主義の理念に忠実であったと。 溢れる光の中で輝く風景を、より細かく写実的に表現しているところが 私の嗜好に合致していたのでしょう。 特に≪牧草地の牛、ルーヴシエンヌ≫≪ヒースの原≫≪サン=マメス平原、2月≫ が印象的でした。 風景の中に小さく映り込む人々の姿が、またとても良くて。 何気ないおしゃべりの声や 生活の営みが絵の中から溢れてくるようでした。 知識なんて特に必要ない。 好きな絵の前に立った時に胸を満たす幸福感・・・ これを味わいたくて美術館を巡っているのかもしれません。 第2章の切り口はかなり斬新だと思いました。 印象派の画家たちが好んで描いた川の水面。 光を反射し、まさに印象的に揺れ動く水面の表現は 19世紀の河川工学における近代化テクノロジーによって 実現されたものでもあるという、一風変わったアプローチになっています。 風景画を眺めに行ったつもりが、ここから急に硬派な土木工学の 資料室に来たような雰囲気。 一見、難しいですが、この事実を知っておくことは、今後の印象派鑑賞に 有益であることは間違いありません。 「セーヌ川は最新テクノロジーによって改修され、穏やかな流れになっていった。 ゆったりとした水は陽光に煌き、周囲の人や情景を映し出す」 勉強になりました。 全体的には、もう少しシスレーの描いた作品のボリュームが欲しかったな。 できれば倍くらい・・・。 日々の雑念を払うには、もう少し多量の幸福感が必要なのかもしれません・・・。 テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術 |
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の
「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展 風景画の誕生 こちらで明日から貸出開始となる「タブレットガイド」鑑賞会に 参加させていただきました。 まず入り口で手にする「展覧会タブレット」 大きさにして12cm×20cmくらいでしょうか。 ケースの裏に手を差し込める部分があるので、 手のひらの上にしっかりと載せてタップする感じです。 通常の音声ガイドは、耳から聞くことで解説を楽しみますが、 このタブレットでは、耳で聞くことはもちろん、目の前の絵と同じ絵をガイドの中に見ながら、 さらに「テキストを読む」をクリックすれば音声と同じ解説を目でも追うことができます。 ![]() 一覧リストに戻れば何度でも簡単に 知りたい絵についてのレクチャーを受けることができます。 加えてスペシャルコンテンツ 「星座メッセージ -石井ゆかりがひもとく12星座の世界- 」 ![]() 美術に造詣が深い著名人の方々の旅にまつわるオリジナルエッセイ「わたしの旅の風景」 ![]() なども読み応えあり。 さらに鑑賞時間が豊かなものになりそうです。 展覧会を楽しむタブレットガイド 因みに・・・ 利用可能期間 2015年9月25日(金)~12月7日(月)までの 毎週金・土曜日18時から~21時まで (貸出は20時まで、入館は20時半まで) 利用料金 520円(税込) 貸出台数 50台(先着順) このお値段でこのコンテンツなら絶対に借りてみる価値大いにありです。 そして・・・この展覧会に伺うのは実は二度目でした。 ![]() レアンドロ・バッサーノ≪ヴェネツィアの製糸場と機織場(7月)≫≪夏(7月)≫ とても素晴らしかったこの展覧会の内容については また後日改めて書いてみたいと思います。 「風景画」と聞いて森と山と海だけが広がる様を想像していたら、全然違いました。 良い意味で予想を大きく覆す、素晴らしい展覧会でした。 テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術 |